【タイの話2】バンコクの夜の豪速球
5人を乗せたトュクトュクは夜風を切り裂いて進んでいく。
こんなにもトュクトュクがスピードが出て、遊園地のアトラクションのような乗り物だなんて思っていなかった。
バンコクには前日の深夜に到着した。
grabでタクシーを呼んで宿に向かう。
東南アジアの移動は本当にgrab様々。
今までの都市よりも洗練された風景が目に飛び込んでくる
大阪以上東京未満。
バンコクは想像した以上に大都市だ。
東南アジアをすごくなめてた。
誰へかわからないけどジャンピング土下座したくなるくらい反省した。
なんなら歯抜けのおじさんが一生コオロギを食べてるんじゃないかと思ってたレベルで下に見てた。
ごめんなさい。
宿泊先を日本人宿にしたのは正解だった。
わからないことを日本語で聞ける上に、泊まってる人もほとんど日本人だ。
予防接種を何回かに分けて打つ予定だったのでバンコクでの2週間をどう過ごすかは考えないといけなかった。
なにしろ、マレーシアではほとんど日本語を喋る機会がなく海外一人旅1週間ちょっとにして、寂しいが大溢れしていていて、一緒に遊んでくれる人がいないと心が折れるかもと思っていたくらいだ。
ありがたいことに同世代の人も泊まっていて到着翌日の夜はカオサンロードに一緒に繰り出す予定ができた。
カオサンロードはバックパッカーの聖地で有名なところらしい。
宿の人が説明してくれたけどなんで聖地かは覚えてない。
日本語だからちゃんと聞き取れていたはずなのに。
ショートカットが似合う美人お姉さんのレイちゃん。
キャップと短パンが別に似合ってるわけでも似合ってないわけでもない20代半ばの青年ノブくん。
れいちゃんが現地で友達になったカップル(タイ人とドイツ人)。
そして僕の計5人で居酒屋で少し助走をつけてから、トュクトュクでカオサンロードに向かうことになった。
日本で社会人していた時みたいなノリで少し懐かしく感じた。
カオサンロードは今やタイにおける大麻の合法化によって西洋人で溢れて返っている。
かつてバックパッカーの聖地と言われたここは昔とは少し違うみたいだ。
レイちゃんの友達のタイ人の女の子は巨漢だった。
想像してたタイ人と違いすぎて、どこの惑星から来た筋肉超人なのか聞きたくなった。
ちなみに必殺技の名前は?
その筋肉超人が働いてるゲストハウスではゲームをしながらお酒が飲めるらしく、夜な夜なパーティーが繰り広げられている。
音楽が流れて、タバコの匂いがする。
少し嗅ぎ慣れていないこの匂いはもしかしたら大麻によるものかもしれない。
西洋人が溢れていて、タイ人はここには1人もいないように見えた。
ゲームをして、バケツに汲まれたお酒を浴びるように呑む。
目の前の景色が霞んで揺れていったのは確実に眠気のせいじゃない。
レイちゃんもノブくんも英語で会話している。
日本語にしてくれよ。
僕は隣のロン毛のおっさんが差し出したアルコールをひたすら飲んでいた。
誰だこいつ。
バンコクの夜の狂騒の中では、自分が誰なのか、相手が誰なのかなんてもう大きな問題じゃなかった。
ただ音楽とお酒、そして隣の謎のおっさんがいれば全て成り立つんだ。
深夜3時を回った頃、レイちゃんとノブくんと3人でタクシーに乗り込んだ。
酔いのせいかネオンの光が揺れているように見えた。
隣ではノブくんがレイちゃんを口説いていた。
「この後、俺の部屋でエッチしましょうよぉ。」
ポケモントレーナーみたいなビジュアルのくせにノブくんはど直球で勝負する剛腕だった。
次の日の昼、起きてきたノブくんからゴーゴーバーでも行きませんかと言われて少し安心した。
よかった。
レイちゃんは彼と寝ていない。
レイちゃんはその日の午前中のフライトで東北に帰って行った。
あとでインスタのメッセージを送ろう。
いつか日本で会う機会があるかもしれない。
その時は、僕の登板機会が回ってくる可能性を考えて身体を作っておく必要があるもんな。
僕はノブくんと違って変化球も使うことは忘れない。