【タイの話3】この写真は誰を幸せにするんだろう

仙人の背中を追う。
バンコクの日中の暑さは本当にうんざりだ。
滴り落ちる汗。
拭っても拭っても体から溢れてくる。


宿で知り合った中川さんはタイのスペシャリストだ。
一年の半分くらいをタイで過ごしている。
66歳。
定年を迎えて好きだったタイにたくさん来ることが出来ていると喜んでいた。
白い髭を存分に伸ばしたその姿は仙人のようで僕は彼をなんの捻りもなく仙人と呼んでいた。
本人のいないところで。


次の日の予定がない時は仙人を頼った。
おすすめの場所や僕が行きたいと思ってるところに連れて行ってくれる。
僕はこれをなんの捻りもなく仙人ツアーと呼んでいた。
本人のいないところで。


今日はお寺をまわる。
休憩も充実だ。
仙人行きつけのカフェで涼み、お昼は仙人お気に入りの豚の内臓で作ったヌードルを食べた。
クソまずいと思ったヌードルに対して「こういう味があることを知れて良かったです」と多分美味しいと思っていないということが伝わる言い方になってしまったことが少し心残りだ。

社会人で相手を気持ちよくするようなお世辞を身につけたと思ってたのにバンコクの地では活かすことができなかった。


仙人はパワフルだった。
この猛暑にも関わらず予定したスケジュールを確実にこなしていく。
仙人ツアーに狂いはない。

正直なところ、1個目のお寺を見た時点で、宿に帰ってシャワーを浴びてベットに横になりたかったけれど、仙人の張り切りようを見たらそんなことは口が裂けても言えない。

歳上の人がはしゃいでたらそこを立てるのが社会人の常識だよな。
今、社会人でもなんでもない無職だけど。


この後も、仙人にはお世話になることになる。
たくさんの場所に連れて行ってもらえて本当にありがたい。
元々カメラ関係の仕事だったということで、ツアーの最中はたくさんの写真を撮ってくれる。
そこに立ってとか指示を出してくれる。
だけど、面白いポーズとか面白い顔をしてとか言われるのだけは本当に勘弁してほしかった。


30歳、無職。
そんな人間の面白ポーズや変顔が66歳無職の仙人の画像フォルダに入って誰が得をするというのだろう。

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