【ガールズバーの話6】天王寺ミッドウィンター狂乱

昔、テレビの企画で飲み姿かわいいグランプリという企画があった。
酔っているからこそ見られる普段とは違う姿や仕草に男性出演者たちは唸っていた。

当時、中学生だった僕にはあまりピンとくる企画ではなかった。
飲む前から同じように可愛くあれよと思っていた。
お酒はもちろん女性というものが未知だった頃だ。(現在も理解しているとは言い難いが)

今の僕が改めてこの番組を見たら男性出演者たちと同じ反応をするだろう。
間違いなく飲み姿がかわいい女性は素晴らしいのだ。


この12月は僕にとってハードな1ヶ月だった。
飲みつぶれるキャストが続出したのだ。

ガールズバーはかなり盛況で、ボーナス支給のタイミングということもあってかシャンパンやクライナーの頻度が多くなっていた。
お客さんは飲んで歌い、女の子たちはそれを煽る。
天王寺の店は北新地にあるようなプロのお店ではない。
ほとんどの女の子にとって楽に稼げるバイトという感覚だし、シャンパンやショットのお酒を飲み慣れているわけではない。
そのため自分の限界を超えてお酒を飲んでしまい潰れてしまうことがある。

Mちゃんがクラブに行きたいと大騒ぎする中、おぶって車まで送った。
Eちゃんが僕の名前を叫びながら背中をフルパワーで何度も叩いてきた。
Hちゃんが急に乳首当てゲームを仕掛けてきた。
Sちゃんがグラスを持つたびに落として割れる。

全部ここ1週間の出来事だ。
テレビアニメの総集編のごとく最後に全てを持ってきている。
この元気玉をぶつけられたら僕は耐えられる気がしない。

そして何よりもストレスフルなのはそういった女の子の暴走を止める役割を担うはずの女マネージャーが誰よりも先に酔い潰れているということだ。
声高々にシャンパンをコールし、下品な掛け声でお酒を煽る。
お酒が回ってくると店内に響き渡る声量で僕を呼びつけ、自分の真後ろにあるものすらも持ってこいと命令する。
べらべらと下ネタを話し、時にはカウンターで堂々とキスをする。
最終的に控え室の椅子で閉店までご就寝という流れはある種の様式美すら感じさせる。

もちろん女マネージャーが不在となった店内は僕一人でコントロールすることになる。
時間給でバイトとして働いてる身からするとこの業務量は割に合わないなと思う。
暇であっても忙しくても結局給料は一緒なのだから。

その上、寝ている本人は誰よりも高い時給をもらい、次の日には記憶をなくし、ご機嫌に出勤するのだ。



お酒は真実を映し出す鏡だ。
どんなに化粧や整形で外見を繕ったとしても人間の本質は変わることはない。
飲み姿はその人の真の姿なのだ。

合コンの定番の質問を思い出す。

『好きな女性のタイプは?』

そのたびに答えるのに困った。
けれども、今は何の迷いもなくかぶせ気味に回答できる。



『おっぱいの大きな女性だ』と。

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