【ガールズバーの話3】クラブに潜むのは、なぎさの女スナイパー

すきぴって言葉を知っているだろうか。

答えは
好きなピープル

要するに好きな人ってことだ。

いや、好きな人って言えよ
って思ったあなたはしっかり時代遅れなおじさんの仲間入りだ。
ジェネレーションという大きな狭間の向こう側からの虚しい叫びにすぎない。

もちろん僕もおじさんの称号は取得済み。

ガールズバーのガールズはほとんどが20代前半だ。
僕とは10歳以上の差がある子もいる。
基本的にボーイの僕とガールズがたくさん喋ることはあまりないんだけれど、少しの会話だけでも違和感を感じずにはいられない。

すきぴ
ばさき
のみべ

全部知らない。
ここは僕が知る日本なのか。

とはいえ、
いやー若い子の言葉しらんわー
とか、自らギャップを作るような発言は駄目だ。

やってしまいそうになるのはわかるけどね。

昨日は女マネージャー(鬼)とは別の車で帰ることになっていた。
※営業後はドライバーさんが女の子とスタッフを家まで送ってくれる。

同乗者はMちゃん。
すらっと引き締まったスタイルの良い女の子だ。
個人的な意見だけど、ニットワンピ姿がかわいい。

本人曰く、AKBグループの渋谷凪咲に似ているとのこと。

前田敦子とか柏木由紀で止まってる僕にとっては誰やねんであるが、少なくとも自分のことを可愛いと思っているのは間違いない。
実際、可愛い。

天王寺の渋谷凪咲はバーの控え室でTinderやクラブで出会った男たちの話を頻繁にしている。
他のガールズにとって彼女は100戦練磨のパリピお姉さんとして尊敬?されている。
男遊びのことなら彼女に聞け、だ。

その夜は福岡出身のミニミニガールEちゃんが友達とクラブに行くと盛り上がっていた。
25時まで働いてそこからクラブなんて最近の若い子は元気だなぁ(おじさんポイント獲得)

閉店後の片付けを終え、Mちゃんと送りの車が停まっているところまで歩いた。
秋はすっかり深まり、風が冷たくなっていた。確実に冬が近づいてる。

Eちゃんの話で刺激されたのかMちゃんはポツリと
『クラブ行きたいなぁ』
とこぼした。

今日は行かないんですか、と僕。

『実はそんなに毎日行ってないんですよ。
みんなからはめちゃくちゃ遊んでると思われてるかもですけど』

はい。僕含めみんなそう思っているでしょうね。

『一回に全力注ぐタイプなんです。』

僕はぼんやりと夜のネオンを見つめながら、真っ直ぐに歩いた。
どんなタイプやねん。

曖昧な相槌に彼女は続ける。

『クラブは男との勝負なんです。』

意味不明だった。
多分、その時の僕はものすごく間抜けな顔をしていたと思う。

どんな勝負なんですか。

『男はわたしを持ち帰るためにあれやこれや仕掛けてくるんです。
それを掻い潜りながらお酒をいかに奢ってもらうか。
そして、しっかりと朝日を浴びて自分の家に帰る。
それが私と男との勝負なんです。』

遠くどこかの大地のことを思う。
世界から戦争がなくならないはずである。
こんなことでも人は争えるのだ。
流れる血に意味を見出すのは非常に困難だ。


そんなにお酒が飲みたければ、僕が奢ってあげるのに。
というか奢りたい。

帰りの車内で、彼女は鋭く夜の闇を睨んでいるように見えた。
その目はターゲットを探すスナイパーのよう。

クラブから無事生還し勝利の朝日を浴びる彼女。
その後ろにはどれだけの男たちの屍が横たわっているのだろうか。

お疲れ様でした。
と短く挨拶し僕は車を降りた。
Mちゃんのお疲れ様ですの言葉を聞く前に車は発進していた。
遠くなっていく車を見送りながら、クラブには絶対いかないと僕は強く、固く誓った。

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