【トルコの話4】マリファナハードドライブ
マリファナでブリブリになって高速道路の側道を160キロで走行する。
耳にガンガンと響くのは陽気なレゲエミュージック。
隣ではタバコをふかしながらムラートがご機嫌に微笑む。
車窓から吹き込む風で髪の毛はもうぐちゃぐちゃだ。
夢が叶う前に死にたくない
ただただ無事目的地に着けることを願った。
その日はムラートが友人の車で目的地まで送ってくれることになっていた。
Googleマップを頼りに指定された場所へ向かう。
アップダウンの激しい坂の上にある場所。
徒歩5分と書いてあるけど、脚が鋼の人間じゃないと確実に5分では辿り着けない。
ほぼそり立つ壁みたいな階段をなぜか本気で駆け上がってムラートと合流した。
薄汚れた建物のテラス
普通に通ったら話しかけたくないようなガラが悪そうな連中がタバコを吸いながらポーカーをしている。
その中にはアランもいた。
笑顔でタバコを差し出してくる。
こいつ、いつもタバコくれるやん。
自動タバコ供給マシーン。
もう1人合流し、4人でご飯を食べにレストランへ
道中、すれ違う人全員とムラートは言葉を交わし、ハグをする。
想像の5倍くらい大きなケバブが来たところで質問する。
完食はもう諦めている。
「街の人、みんな知り合いなの?」
ムラートは大きなケバブを大きな口で頬張りながらスマートフォンをタイプする。
「私はここで生まれ、ここで育ち、ここで死ぬ。だからみんなをよく知っている。」
Google翻訳はそう示していた。
到着した車に乗り込もうとすると、近くから子供が駆け寄ってきてムラートに飛びついた。
ムラートは子供を抱き寄せて頭をクシャクシャと撫でた。
とても幸せそうに大きな声で笑っている。
いろんな人生があるな、と思った。
昔、カンボジアを訪れた時、トンレサップの湖畔で生涯を過ごすしかない難民を見て、可哀想だと思った。
選択肢のない人生を不幸に思った。
今、目の前に広がる光景をみて、カンボジアの難民たちを可哀想だなんて言葉で片付けるのは少し浅はかなのかもなと感じた。
ムラートのように同じ場所で生涯を全うし輝く人生もある。
何が良いかは、その人次第かもしれないと思った。
車は目的地に向かう。
音楽をかけ車内のボルテージは上がっていく。
今夜は最高のお祭りが待っている。
運転手がマリファナを吸い出すと車のスピードはさらに上がり、気付いたら側道を160キロで走行していた。
隣のムラートはご機嫌だ。
心配そうな僕を見て、頭をクシャクシャと撫でてくる。
「ノープロブレム」
立ち上げた親指をこちらに向ける。
いや、オオプロブレムやろが。