【マレーシアの話4】たまには空き缶にでもいい
ペトロナスツインタワーの足元に大きな噴水がある。
水とカラフルなライトがおりなす噴水ショーを見ていた。
時刻は夜の20時をまわろうとしている。
寂しくない?おれ。
高層ビルとか大型ショッピングモールとか名古屋グランパスのユニフォーム着た一人旅人間がくるとこじゃない。
家族とか恋人と来るとこよこれは。
正直、クアラルンプールが大都会すぎて寂しくなっていた。
街を歩けば、ハローとかウェルカムとか言ってもらえたマラッカの街と違う。
道行く人は誰も声をかけあわない、他人に無関心な大都会のそれは自分がこの世界から完全に孤立した存在のように感じた。
大都会に僕はもう1人で投げ捨てられた空き缶のようだ
WANDS風に言えば。
そんな時に、声をかけてくれたモロッコ人女性のサファの存在はとても大きかった。
スペインのセビージャから旅行に来ていたサファ。
ホテルまでの道がわからないから聞いてきて、明日の予定がお互い未定だったので一緒にクアラルンプールを観光することになった。
1人で旅行してる女の人は強い。
私はここに行きたい!
こっちの方が運賃が安いから時間がかかってもこれで行く!
写真はこの角度で!
主張が半端ない。
それくらいじゃないとやっていけないのかもしれない。
あれ、俺、空き缶に戻りたい。
サファに振り回されてスコールにもあって1日が終わった。
僕は明日クアラルンプールを出てマレーシア最後の街ペナンに行く予定だった。
だから必然的にサファとはこれでお別れだ。
Instagramを交換し合う。
「明日、バスターミナルまで送りにいくわ」
サファは言った。
バスターミナルまでは僕らが滞在しているエリアからタクシーで30分の距離だ。
正直遠い。そして僕の出発は朝9時のバス。
今日の12時集合に寝坊で遅刻したサファには少し早い気もする。
Googleマップを指差し、
「ありがとう。ここがバスターミナルだよ」
と伝える。
サファは僕の携帯画面を覗き込んで、少し経ってから微笑んだ。
「セビージャに来たらいつでも連絡してね」
いや、見送りにこねーのかよ。