【センチメンタルな話7】此処じゃない何処かのことばかり考えていましても
ゆなちゃんの潤む目を見た時
自分は何で海外へ行こうとしているんだろうと思った。
明後日にはマレーシアに飛び立つ。
1年以上前から計画して、昼も晩も働いてお金を貯めてこの日を待ち望んできた。
それなのに、こんなにも望んでいた出発の日が来てほしくないと思っている自分がいる。
僕は過去の人生を含めて「変化」をここではないどこかへの「切符」にしていた。
転校、受験、就職、転職、そして世界一周。
新しい環境を手にいれることで今の環境にリセットボタンを押す。
それを僕はずっと肯定してきた。
今いる場所じゃないどこかへ行きたいとどのステージでも思っていたからだ。
それはすなわち、現状への不満からくる新しい環境に対する夢みがちな期待に他ならないのかもしれない。
今まで、彼女がいてもどこかに抱えていた鬱屈をゆなちゃんの前では感じない。
リセットボタンを押さずに、この状態の先に進み続けても自分はこの人生を肯定できるのかもしれないと思ってしまう。
この環境を手放したくない。海外に出たくないと思ってしまっている。
その感情を否定したい。
この1ヶ月ずっとそう思っていた。
1年半、何もかも制限して600万を貯めた。
この世界一周に踏み込むためにどれだけの時間を割いてきたと思うんだ。
会社も辞めた。劇団も。ガールズバーも。
いろんなものを手放してきた。
かけてきた時間が手塩にかけて育て上げた夢を彼女の涙なんかで手放すことを許してくれるわけがない。
そうやって蓋をしてきた感情が潤む目をみてついに溢れてしまったと感じた。
出発前にたくさんの思い出をとやり尽くしたあらゆることがより頑丈な鎖となって僕を引きとめる。
淡路島もディズニーランドも江ノ島も横浜中華街も名古屋城もプラネタリウムも全部。
でも、行くんだろうな。
この世界一周を志したから、こういう道にいる。
だからこの世界一周の先にもっとお互いがよくなれる未来があると信じようと思った。
というよりそうなるように努力したい。
我ながらなんてスタートだと思う。
弱々しく小峠風に頭の中で叫ぶ。
普通、嫌々で世界一周スタートする?
彼女と離れたくないから行きたくないとか思いながらスタートする?
するんだなこれが。
インスタでフォローしている世界一周女忍者さんの投稿に書いてあった。
現実に起きてないことで悩まない。
この先に何があるかわからないし、それを思い悩む必要なんてない。
「今を全力で生きる」
それは常にいつかのことばっかり考えていた僕にとって理想としてきた在り方そのものだ。
だから本気で旅をしようと思う。
彼女も本気で大事にして自分の夢も大事にする。
それが自分にとって「今を全力で生きる」ということになるんだと思う。
そんな深夜の決意表明をT.M.RevolutionのHOT LIMITを口ずさみながら書きました。
キミとボクとなら it’s alrightとか言っちゃって。