THIS IS MY START OVER

ある時、実家で小学校の卒業文集をひらいた。
テーマは将来の夢について

「絵を描きながら世界中をまわる旅人になる」

何にでもなれると思っていた当時の僕は、好きな絵を描きながら、知的好奇心を満たすような冒険にあふれる人生を望んでいたみたいだ。

ところが、30歳を迎える僕は、現実の前にたくさんの言い訳を並べて、日々を浪費するつまらない大人になっていた。
変化するリスクだったり、周りからどう思われるかだったり、動かない自分を正当化する言い訳を山盛り積み上げて心の声に聞こえないふりをした。


判断の最終決定権はいつも自分じゃない何かだった。
絵も描かなくなったし、最低限の旅行で満足したふりをしていた。

切り取ったら同じ内容の金太郎飴のような毎日。
なんのために生きているのか。この先に自分が誇れるような人生が待っているようには到底思えなかった。

結婚、子育て、マイホーム、そして夫婦としての老後
30歳が近づくにつれ結婚の報告は増え、インスタグラムは名前のわからない子供の写真で溢れかえっていた。
僕も後を追うようにそのような人生を送っていくのだろうか。
想像すればするほどその未来に気が重くなった。

たまたま開いた卒業文集は子供の僕からの最後のメッセージだったのかもしれない。

隋の皇帝である煬帝は
『悠久の時の流れの中で人の一生など波にさらわれる月の光のように儚い』
と表現した。

どんな生き方を選んでも、人生はあっさり終わってしまうのだ。
自分の人生を振り返ってみると、何か大きなことを成し遂げた経験なんてないし、思い描いたような道のりでもなかった。


子供の僕が信じた無敵の自分にはなれなかったけど、そんな僕でも昔の自分の夢だけは叶えてあげたいと思った。

それが僕が旅に出る理由になる。
未来に対する保険なんてない。戻ってきたあとの人生のことを想像すると尻込みしてしまいそうになる。
でも、このままの生活を続けても後悔することもはっきりわかっていた。

扉をずっとノックしていた心の声にやっと返事をすることができる。
これは誰に誇るわけでもない、子供の頃の自分との約束を果たす旅だ。